むし歯は放置するとどうなるの?

虫歯(むし歯)は初期段階での痛みや異常を感じにくく、多くの場合、自覚することなく進行してしまいます。

今回は、虫歯が進行する過程やそれに伴う症状、さらに虫歯を放置した際に発生する可能性のある様々な疾患についてお話しします。また、虫歯を防ぐために日常で実践していただきたい予防策についてもご紹介します。



虫歯の進行と状況、治療法について

歯科の診察や治療の最初の時、歯医者さんが患者さんの歯を点検しているときに、「1から5/(車線)、6番C2...」といった数字やアルファベットを口にされ、それを歯科衛生士さん(歯科助手さん)が診療記録にメモしている光景に遭遇したことはありませんか?

この時、歯科医師が使用する「C」という文字は、「カリエス」の略で、虫歯を示す専門用語です。「C1」「C2」などといった表現は、虫歯の進行度合いを示しています。

以下に、先ほどの用語で示される虫歯の進行度と、それに対応する一般的な治療方法について解説します。

CO(シーオー:観察が必要な歯)


この段階では、歯がわずかに融け始めている虫歯が疑われる状態を指します。
まだ黒ずんでいたり、穴が開いているわけではありません。
フッ素を含んだ歯磨き粉を使ってしっかりとブラッシングすることで、歯の再石灰化を促進し、歯が自然に修復される可能性があります。

C1(エナメル質う触)


これは歯の表面を保護しているエナメル質が溶けてしまい、小さな穴が開いた状態を指します。
この段階では、まだ象牙質へ虫歯が進行していないため、痛みを感じることはありません。
感染した部分を最小限削り取り、主に白い詰め物で修復し、治療を完了させます。

C2(象牙質う触)


この状態は、虫歯がエナメル質を越えて象牙質まで到達し、冷たいものや甘いものがしみるようになっている状態です。
治療中に痛みを感じることがあり、麻酔が必要になることもあります。
虫歯が小さい範囲に留まっている場合は、先述の通り白い詰め物をして治療を終えますが、もし虫歯が深部に広がっている場合や範囲が広い場合は、削り取った部分に型取りして作成した詰め物を装着して治療を行います。

C3(神経に達したう触)


エナメル質と象牙質が溶け、虫歯の菌が神経にまで到達し、激しい痛みを引き起こす状態です。
神経が死んで炎症を起こし、膿が出たり、歯茎や顔が腫れあがるなどの症状が現れることもあります。
この段階での治療は、まず麻酔を行った上で、根管治療を実施します。
根管内の細菌や膿、死んだ神経を取り除き、根管を清掃した後、薬剤を詰めて最後に冠をかぶせます。

C4(残根状態)


ほとんどの歯が溶けて無くなり、根っこの部分のみが残っている状態です。
治療が可能な歯質が残っている場合は、根管治療後に冠をかぶせますが、多くの場合は麻酔をして歯を抜くことになります。

虫歯を放置するとどうなるの?虫歯を放置することで起きる病気とは?

虫歯があるけれど痛みを感じないために、治療を受けずに放っておく方がいらっしゃるかもしれません。

しかし、虫歯は単に口内の問題だけではなく、思わぬ他の疾患をもたらす可能性があることが分かっています。

以下に、虫歯を放置することで引き起こされる可能性のあるいくつかの病気についてご紹介いたします。

<その1 歯原性菌血症>

「菌血症」とは、傷口から細菌が血液中に入り込み、血流に乗って全身に運ばれる状態を指します。

虫歯や歯周病があると、その原因菌が歯茎から体内に侵入して「歯原性菌血症」を引き起こすことがあります。

通常、人間の体には免疫機能が備わっているため、菌血症が発生しても気づかないことが多く、直ちに重篤な症状を引き起こすことはまれです。

しかし、体調が悪かったり、体力が低下していると免疫機能が十分に働かなくなり、「歯原性菌血症」が原因で動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞などの重篤な症状を引き起こすことがあります。実際に心筋梗塞の患者さんの心臓から歯周病菌が見つかった例も報告されています。

<その2 骨髄炎>

歯根内の虫歯菌が顎の骨髄まで拡がると、骨髄炎を引き起こすことがあります。

この場合、顎の骨が菌によって侵され、腐食してしまうため、激しい痛みや発熱、吐き気などの症状が表れることがあります。

骨髄炎が発症すると、菌を除去するための抗生物質の投与が必要になることもあり、入院治療が必要になることがあります。

<その3 副鼻腔炎>

歯は歯茎の血管を通じて体の他の器官と繋がっています。

特に上の歯の虫歯が悪化すると、虫歯菌が鼻の方向に広がり、副鼻腔炎を引き起こすことがあります。

見た目には「歯」と「鼻」との関連性は感じられないかもしれませんが、虫歯が原因で発症する病気の一つです。


虫歯は予防できる?

ここまえ虫歯を放置することのリスクについてお読みいただき、少しでも虫歯の怖さが伝わったでしょうか?

一旦虫歯になると、自分では治せず、治療も大変になるというのが実情です。

そこで大切なのは、虫歯を予防することですよね。
ここでは、虫歯にならないための予防法をご紹介したいと思います。

<虫歯は感染する?>


生まれたばかりの赤ちゃんには虫歯菌が存在しません。

しかし、親や兄弟がスプーンや食べ物を共有することで、赤ちゃんの口の中に虫歯菌が移るのです。

親がこのことを意識することで、赤ちゃんを虫歯菌から守り、虫歯ゼロの道へ近づけることができます。

<歯のお掃除グッズを駆使しよう!>


「これから虫歯を作らない!」を目標に、現在の歯を守ることは充分に可能です。

そのためには、歯ブラシだけでは落としきれない汚れや歯垢をいかに除去するかが鍵となります。

デンタルフロスを使用して歯間の歯垢を除去し、さらに歯間ブラシで歯と歯茎の間の隙間をブラッシングしましょう。

スポットブラシは小さなブラシ部分と細い毛先が特徴で、特に奥歯の掃除に適しています。

<定期的な歯医者さんでのメンテナンス>


家庭での歯磨きやお掃除グッズでは、汚れの約70〜80%しか落とすことができません。どんなに丁寧に磨いても、残る20〜30%の汚れを自宅で完全に除去することは難しいです。

歯垢に含まれる虫歯菌が残っていれば、虫歯のリスクはなくなりません。

ですから、定期的に歯科医院を訪れ、歯の状態をチェックし、専門の器具を使用して家庭では落としきれない歯表面や歯茎にあるバイオフィルムと呼ばれる汚れを清潔にすることが推奨されます。

PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)という機械を用いた歯のクリーニングにより、バイオフィルムを取り除くことが可能で、虫歯のリスクを減らすためには非常に重要な処置です。

最低でも3ヶ月に1度のペースで歯科医院を訪れ、チェックとクリーニングを受けることが、健康で美しい歯を維持するのに効果的です。

まとめ

虫歯は放置する期間が長くなるほど、治療が困難になり、さらには他の健康な歯にも悪影響を及ぼします。

「あまり痛くないからまだ平気」と油断していると、知らないうちに虫歯が進行してしまうことがよくあります。自分では症状を感じていないからといって、虫歯がないとは限りません。

痛みを感じてから治療を始めることにならないよう、日々の歯磨きに加え、定期的な検診とクリーニングを受けて、早期に虫歯を発見し、予防していくことが大切です。

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