インプラントは虫歯にならない、でも失う|インプラント周囲炎の話

インプラントは虫歯になりません。これは事実です。ところが、そのことがかえって「もう何も心配しなくてよい」という印象を与えてしまうことがあります。

実際には、インプラントを失う原因のほとんどは虫歯ではなく、周りの歯ぐきと骨に起こる炎症です。しかもこの炎症は、痛みという形で知らせてくれません。大阪市西区・九条の当院で、入れたあとの管理をご説明する理由をお伝えします。

目次

  1. 支えているのは、歯ぐきと骨です
  2. 天然の歯より弱い部分があります
  3. 起こりやすくなる条件
  4. 自分でできる手入れ
  5. 検診で何を見ているか
  6. 起きてしまった場合
  7. 長く使うために
  8. まとめ|虫歯にならないことと、失わないことは別です

1. 支えているのは、歯ぐきと骨です

インプラントは、あごの骨に埋め込んだ土台の上に歯の部分を取り付けたものです。人工物なので虫歯にはなりません。しかし、それを支えている歯ぐきと骨は、ご自身の生きた組織です。ここに炎症が起きれば、支えは失われていきます。

歯周病とよく似た経過をたどります

汚れが溜まると歯ぐきが腫れ、進むと骨が溶けていきます。この流れは歯周病と同じです。違うのは、進み方が速い傾向があることと、痛みが出にくいことです。気づいたときには支えがかなり減っていた、ということが起こりえます。

インプラント周囲で起こること 1 汚れが溜まる 自覚症状なし 清掃で戻せる 2 歯ぐきが腫れる 磨くと出血 この段階なら回復する 3 骨が溶けはじめる 痛みは出にくい 処置が必要になる 4 支えを失う 動く・抜け落ちる 撤去することも 進み方には個人差があり、必ずこの通りではありません

▲ 痛みが出にくいため、気づきにくい経過をたどります

2. 天然の歯より弱い部分があります

自分の歯は、根と骨のあいだにクッションのような組織があり、細菌の侵入を防ぐ仕組みと、力を受け止める仕組みを備えています。インプラントは骨と直接結合しているため、このクッションがありません。そのぶん、細菌にも力にも弱い面があります。

痛みで気づけないという弱点

クッションの部分には神経が通っており、噛みすぎたときに違和感を教えてくれます。インプラントにはこれがないため、強く噛みすぎていても分かりません。炎症が起きても痛みが出にくいのは、この構造の違いによります。

天然の歯とインプラントの構造の違い 比較項目 天然の歯 インプラント 骨との間 クッションがある 直接結合している 細菌への抵抗 防ぐ仕組みがある 弱い面がある 力の感知 違和感で気づける 気づきにくい 炎症の進み方 比較的ゆるやか 速い傾向がある 虫歯 なる ならない 痛みの知らせ ある 出にくい

▲ この違いが、管理の重要さにつながります

3. 起こりやすくなる条件

歯周病の既往がある方は、インプラント周囲炎も起こりやすいことが知られています。口の中の細菌の状態が関係するためです。また、喫煙、糖尿病、そして歯ぎしりによる過度な力も影響します。清掃が届きにくい形になっている場合も注意が必要です。

残っている歯の状態も関係します

他の歯に歯周病が進んでいると、そこが細菌の供給源になります。インプラントだけを見ていても守れないということです。当院で、インプラントを入れる前に歯周病の治療を済ませていただくのは、この理由からです。入れたあとも、残っている歯の状態をあわせて管理していく必要があります。口の中はつながっているため、一部だけを切り離して守ることはできません。

リスクを高める条件 歯周病の治療を受けたことがある 喫煙している 糖尿病がある 歯ぎしり・食いしばりの自覚がある 定期検診に通えていない インプラント周りが磨きにくい 条件が重なるほど注意が必要になります

▲ 当てはまる場合は、確認の間隔を短くします

4. 自分でできる手入れ

基本は天然の歯と同じで、汚れを溜めないことです。ただし、インプラントの周りは形が違うため、当て方に工夫が要ります。歯と歯ぐきの境目に毛先を沿わせ、やさしく動かします。強くこする必要はありません。むしろ硬い毛先で強くこすると、歯ぐきが下がって支えの部分が露出することがあります。やわらかめの歯ブラシを、軽い力で当てるほうが適しています。

歯間の清掃が特に重要です

インプラントと隣の歯のあいだは、汚れが溜まりやすい場所です。フロスや歯間ブラシで清掃していただきますが、金属の芯が露出したタイプの歯間ブラシは表面を傷つけることがあります。どの道具が適しているかは、お口を見てご案内します。

入れたあとの手入れ 1 境目に沿わせる 歯ぐきとの境目に 毛先を当てる 2 歯間を清掃する 隣の歯とのあいだ 溜まりやすい場所 3 道具を選ぶ 金属の芯が出た ものは避ける 4 定期的に確認 自分では気づけない 検査が要ります 適した道具は形状によって変わります。検診でご案内します

▲ 天然の歯と同じ基本に、少しの工夫を加えます

5. 検診で何を見ているか

インプラントの周りも、天然の歯と同じようにポケットの深さを測ります。出血の有無、歯ぐきの色や形、そして噛み合わせのバランスを確認します。定期的にレントゲンを撮り、骨の高さが変わっていないかも見ています。

自覚症状が出る前に見つけます

痛みが出にくい以上、症状に頼ることはできません。数値と画像で経過を追い、前回との違いを見るしかありません。逆に言えば、定期的に来ていただければ、失う前の段階で気づける可能性が高くなります。

定期検診で行うこと 1 検査 ポケットと出血を記録 2 画像で確認 骨の高さの変化を見る 3 かみ合わせ 力の偏りを調整する 4 清掃 専用の器具で行う 確認の間隔は状態によって異なります

▲ 症状に頼らず、数値と画像で経過を追います

6. 起きてしまった場合

歯ぐきの炎症にとどまっている段階であれば、清掃とお手入れの見直しで回復が期待できます。骨が溶けはじめている場合は、汚染された表面を清掃する処置が必要になります。進み方によっては、インプラントを撤去する判断になることもあります。

早い段階なら選択肢が残ります

回復が期待できるのは、炎症が歯ぐきにとどまっている段階です。骨が失われてしまうと、元の高さまで戻すことは容易ではありません。定期的な確認をおすすめするのは、この差が大きいためです。もし出血や腫れに気づいた場合は、次の検診を待たずにご連絡ください。痛みがないからといって軽い状態とは限りません。

段階によって変わる対応 歯ぐきの炎症の段階 ・清掃と手入れの見直しで対応 ・回復が期待できる ・通院の回数も少なく済む ・費用の負担も小さい ・検診で見つけられる 骨が失われた段階 ・汚染された表面の清掃が必要 ・元の高さには戻りにくい ・処置が複数回にわたる ・撤去の判断になることも ・自覚症状は出にくいまま

▲ 歯ぐきにとどまっているうちなら、戻せます

7. 長く使うために

インプラントは、入れて終わりの治療ではありません。適切に管理すれば長く使えますが、放置すれば数年で失うこともあります。この差を分けるのは、日々の清掃と定期的な確認です。時間と費用をかけたものだからこそ、その後の管理に意味があります。

費用の考え方

インプラント治療は自由診療(保険適用外)です。定期的な確認と清掃にも費用がかかりますが、失って作り直すことに比べれば負担は小さく済みます。医療費控除の対象になりますので、領収書は保管しておいてください。

失う原因の多くは炎症です 炎症 で失います 周囲の炎症 歯ぐきと骨の支えを失う 過度な力 歯ぎしり・かみ合わせの偏り 防ぐには 日々の清掃と定期的な確認 経過や必要な管理には個人差があります

▲ 虫歯にならないことと、失わないことは別です

まとめ|虫歯にならないことと、失わないことは別です

インプラントは人工物なので虫歯にはなりませんが、それを支えているのは生きた歯ぐきと骨です。ここに炎症が起きれば支えは失われます。天然の歯にあるクッションの組織がないため、細菌にも力にも弱く、痛みで知らせてくれないという弱点があります。

歯周病の既往、喫煙、糖尿病、歯ぎしりは、リスクを高めることが知られています。歯ぐきの炎症にとどまっている段階なら回復が期待できますが、骨が失われると元には戻りにくくなります。症状に頼れない以上、数値と画像で経過を追うしかありません。インプラント治療は自由診療(保険適用外)です。経過には個人差がありますので、入れたあとの定期的な確認をおすすめしています。大阪市西区・九条のうえすぎ歯科クリニックまでご相談ください。

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出典・参考資料

  • 公益社団法人 日本口腔インプラント学会
  • 特定非営利活動法人 日本歯周病学会
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯・口の健康」
  • 国税庁 タックスアンサー「医療費控除の対象となる歯の治療費」

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療の経過・効果には個人差があります。本記事で扱う治療には自由診療(保険適用外)が含まれます。詳しくは歯科医師にご相談ください。