診療科目
矯正治療(矯正歯科)とは?
矯正治療(歯列矯正)とは、出っ歯・乱ぐい歯・八重歯・受け口など噛み合わせの悪い歯並びを治療することです。
これは、単に見た目を美しくするだけでなく歯槽膿漏・虫歯・咀嚼障害等の病気を予防するためにも重要な歯科治療です。
また、歯並びが整うことで、虫歯や歯槽膿漏の原因となるプラークがつきにくくなり、歯の寿命が延びるという効果もあります。
治療法としては口のなかに装置を入れ、歯に一定の力をかけて人工的に動かし、歯並びや咬み合わせを治します。
悪い歯並び、ほっておくとどうなるの?
1歯が重なりあったり、ずれて並んだりしている
叢生(そうせい)
歯並びががたがたしている状態で、乱杭歯(らんぐいば)とも呼ばれます。上下の歯の咬み合う部分が少なくなるので、 噛む能率が低下します。また、歯磨きがしにくいため虫歯や歯周病になりやすくなる*1といわれています。もちろん見た目が悪いことによる心理的な影響*2や、 対人関係に及ぼす影響も無視できません。
*1Helm and Petersen, 1989 /
*2 Evans and Shaw, 1987 他
2歯と歯の間に隙間が開いている
空隙歯列(くうげきしれつ)
歯並びに隙間が空いている、隙っ歯(すきっぱ)のことです。舌の位置に問題があったり、歯が埋まって生えてこない場合に起こることもあります。埋まっている歯(埋伏歯)を放置するとのう胞を形 成して隣の歯の根を吸収してしまうリスク*3があります。
*3 Ericcson and Kurol, 1987
3横から見た時、下の前歯が上の前歯より前に出ている
反対咬合・下顎前突
受け口では前歯の咬み方が反対になります。食べ物を噛みにくいだけでなく、しゃべり方にも影響*4がでます。 またアゴが出た顔立ちになるので、この咬み合わせを持つことによる心理的影響も大きい*5とされています。顎関節症(アゴが痛くなる、口が開きにくくなる)を発症するリスクが高くなるという 報告*6もあります。
*4 Laine, 1987, 1992*5 Seralら 他 / *6 Mohlin and Thilander, 1984他
4横から見た時、下の前歯より上の前歯が5mm以上前に出ている
上顎前突
上の前歯が出っ歯の状態になります。上下の前歯の隙間が6mm以上になると転んだ時などに歯が折れたりする危険性が 増大する*7とされています。8mm以上になると歯周病を悪化させる*8ほか、口が閉じにくく口の中が乾燥するために歯 ぐきの状態が悪くなります*9。もちろん見た目も良くないため心理的影響も大きい*10とされています。
*7 Javinen, 1978, 1979, O’Mcullanc, 1973 / *8 Horupら, 1987他 / *9 Geiger and Wasserman, 1976, Helm and Peterson, 1989*10 Helmら, 1985他多数
5前から見た時、上の前歯と下の前歯の間に隙間がある
開咬
奥歯は噛んでいるのに上下の前歯が噛み合わない状態です。前歯で食べ物が噛み きれないため、良く噛まないまま丸のみしたり、好き嫌いが増えたりします。噛む負担が奥歯に集中するので、歯の寿命 が短くなる可能性を示唆する報告*11もあります。
また、顎関節症(アゴが痛くなる、口が開きにくくなる)を発症するリスクを高める*12ほか、舌足らずなしゃべり方になるなどの発音障害*13も起こります。
*11 宮崎, 茂木ら, 2001 / *12 McNamara, 1995*13 Kletchakら, 1976
6前から見た時、下の前歯が上の前歯に隠れてほとんど見えない
過蓋咬合
下の前歯が上の歯と噛むのではなく、上顎の歯ぐきに噛みこんでいる状態です。上下の前歯の重なりが6mm以上になる と、歯ぐきが傷つけられて歯を支える組織に影響が出るとの報告*14があります。 また、歯が極端にすり減ると言った弊害が指摘*15されています。
*14 Biomasら, 1994 / *15 Ritchardら, 1992他
7上の歯並びの真ん中と下の歯並びの真ん中が合っていない
顎偏位・臼歯部交叉咬合の可能性
上下の歯の真ん中が合っていない原因のひとつに、アゴがずれている、または歪んでいる可能性があります。またその際に奥歯の咬み方が左右で違う、ということもよく起こります。これを放置する と、歯が極端にすり減ったり*16、顎関節症(アゴが痛くなる、口が開きにくくなる)のリスクが増大する*17と言われています。また成長期の顎偏位は顔が歪むといった症状にもつながります。
*16 Silnessら, 1993 / *17 McNamara, 1995
8無意識にしている時、寝ている時に口を開けていることが多い
口唇閉鎖不全・上下顎前突
前歯が前方に突き出ていると、口元が出て唇が閉じにくい状態になります。口が開いていることが多くなり、口の中が乾燥すると虫歯や歯周病になりやすくなります*17。また口が開いていると顔立ちにも悪い影響があります。
*17Silvermanら, 1965 他多数
矯正治療の始め時は?
「矯正治療って、何歳から始めたらいいの?」
「矯正を始めるのが遅すぎた?」
「こんな早くから矯正を始める必要がある?」
矯正治療のご相談でよく聞かれるご質問に、矯正治療を始めるタイミングのことがあります。
治療開始のタイミングについては、専門医の間でも意見が統一されていないこと、また成長、歯並び、歯の生え方、顎の形などが人によって異なるので、一概に何歳からと決まっているものではありません。
治療のプランが唯一つだけしか無いことはほとんどなく、私たちは出来るだけ多くのプランを提示したいと考えています。それぞれのプランには利点欠点があります。 いちばん納得できる治療プランを一緒に考えていきましょう。
治療プランには大きく分けて3つの方法があります
Aプラン
小学校低学年頃から開始する成長期の治療(Ⅰ期治療)と中学生以降の永久歯の並びを整える治療(Ⅱ期治療)の2段階で治療するプラン
- メリット
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- 歯だけでなく顎の骨のバランスも整えることが可能です。
- 治療で永久歯を抜く可能性を減らすことができます。
- Ⅰ期治療で治ってしまえばⅡ期治療は不要です。
- デメリット
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- トータルの治療期間が長くなります。
Bプラン
中学生以降永久歯が生え揃ってから治療を開始するⅡ期治療のみのプラン
- メリット
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- Aプランと比較して短期間にまとめて治療を行えます。
- デメリット
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- 顎の骨の大きさ、バランスを改善することはできません。
- 抜歯をして矯正治療を行う可能性が大きくなります。
Cプラン
歯並びの問題が生じた時にその都度対処するプラン
- メリット
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- 症状が軽く、問題点が限られている場合には低料金・短期間で治療を行えます。
- デメリット
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- 最終的な永久歯の歯並びをきちんと並べることを想定した、長期的なプランを立てずに、とりあえず目先の問題を対処することになります。
- 見た目の「歯並び」は一時的に良くなるかもしれませんが、「かみ合わせ」の治療は不十分なものになる可能性があります。
- 歯の生え変わりに伴って新たに出てくる問題を何度も治療する必要があったり、Cプランだけで治らない場合、途中からAプランに切り替えることもあります。
3つのプランにはそれぞれ利点・欠点があり、一概にどれがよいと言えるものではありません。また、症状によってもお勧めできる方法が異なります。詳しくは矯正医にご相談ください。
矯正治療の流れと料金
矯正相談
歯並びをチェックして矯正すべきかどうか、するとすればどのような方法になるのかなどをご説明します。ご質問にもお答えします。
・相談料:1,080円
1.すぐに矯正を始めた方がよい場合
→矯正を進めるかどうか、ご家庭でご検討の上ご連絡下さい。
2. 少し待ってから矯正を始めるのがよい場合
→他に問題が生じないかどうかのチェックを兼ねて、年1回〜3回程度、歯並び健診を行っています。
3. 矯正する必要はない場合
→虫歯や歯周病の定期的なチェックをお勧めします。
矯正治療開始
検査
あごの骨の状態も含めて、かみ合わせの問題点を調査するため、写真や歯型、レントゲンをとります。同時に矯正治療前の状態を記録しておきます。
・検査料:5,400円
ケースカンファレンス
検査結果の分析を行い、複数の矯正専門医が合議の上で治療方針の決定を行っています。
診断
分析結果からわかった歯並びの問題点、治療方法、治療期間について詳しくご説明します。治療承諾書をお渡しいたしますので、矯正治療を開始するかどうか再度ご検討頂きます。
装置装着
治療計画に沿って矯正治療を行っていきます。 装置は何回かに分けて装着することもあります。
※装置料は治療プランにより異なります。矯正料金表をご参照ください。
調整
およそ1ヶ月に1回ごとのご来院で装置の調整を行っていきます。
・調節料:5,400円
歯並び健診
年1回から3回程度の定期健診です。歯並びに問題が生じていないかどうかや、矯正治療を開始するタイミングをチェックします。
・相談料:1,080円
矯正料金
矯正相談 | 歯並び健診料:1,080円 |
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装置料 | 部分矯正:90,720円より ※基本的に片顎360,000円、1/4顎180,000円、少数歯90,000円程度となります。 ※簡単な矯正装置(リンガルアーチや床矯正等)は1装置につき90,000円です。 |
治療費 | Ⅰ期治療費:388,000円 Ⅱ期治療費:777,600円 ※永久歯交換完了前の成長期の矯正治療をI期治療、永久歯列期以降のエッジワイズ治療を基本とする治療をII期治療とします。 ※II期治療開始前にI期治療・部分矯正・保隙等を行った場合は、II期治療費から相当分の治療費(調節料・観察料は除く)を差し引きます。 |
矯正費 | 舌側矯正:1,404,000円 ※下顎唇側の場合:1,090,800円 |
調節料 | 調節料・観察料:5,400円 |
その他料金 | 矯正用インプラント料(2本まで): 54,000円 ※同一部位への再埋入時には料金はかかりません 保隙装置: 21,600円 ※保隙装置の管理料は歯並び相談料に準じます。 |
治療の方法と装置の種類
I期治療
乳歯から永久歯に生え換わる時期に、永久歯の生える場所を確保したり、出っ歯や受け口を、骨の成長をコントロールすることで改善したりします。
この時期は虫歯になりやすいため、基本的にご自分で取り外し可能な装置を使用しています。取り外しできない装置を使用する場合も、あまり複雑で歯が磨きにくい装置は使用しません。また、できるだけ前から見えない装置を使用するようにしています。
Ⅱ期治療
永久歯が生えそろう中学生以降は、エッジワイズ装置とよばれるワイヤーと歯につけるブレースを用いた装置での治療が基本になります。成人の治療も同様です。
この装置を使うと歯一本一本の位置を細かくコントロールできるので、完璧にそろった歯並び、きっちりとした奥歯の咬み合わせをつくることができます。
昔は金属色の目立つものでしたが、当院ではすべて透明で目立ちにくい装置を使用しています。
また、裏側からの全く矯正していることがわからない装置(舌側矯正)や、透明なマウスピース状の取り外し可能な装置(インビザライン)による治療も行っています。
これらの装置は症状によって使えないこともありますので、詳しくは担当医にご相談ください。
部分矯正
歯並び全部を矯正治療するのではなく、気になるところだけ部分的に治療することも可能です。
治療には限界もありますが、料金・期間を減らすことが可能です。詳細は担当医にご相談ください。