せっかく歯並びが整ったのに、装置を外したら歯の表面に白い跡が残っていた——矯正治療でもっとも避けたい結果のひとつです。並びはきれいになったのに、歯そのものを傷めてしまうのは残念なことです。
装置が入っている口の中は、これまでと条件がまったく違います。同じ磨き方では追いつきません。大阪市西区・九条の当院で、矯正を始める方にお伝えしている内容をまとめました。マウスピース矯正の方にも関わる話です。
目次
- 装置の周りは、汚れが残るようにできている
- 白い跡は、初期のむし歯です
- 道具を足してください
- フッ素を味方にしてください
- マウスピース矯正の場合
- 検診の間隔を短くします
- 外したあとにできること
- まとめ|落とすことと、守ることを両方やります
1. 装置の周りは、汚れが残るようにできている
歯の表面に付ける装置は、四角い土台とワイヤーでできています。この土台の周り、そしてワイヤーの下は、歯ブラシの毛先がまっすぐ当たりません。装置を避けるように毛先が滑ってしまい、際の部分に汚れが残ります。
唾液も届きにくくなります
口の中には、汚れを洗い流し、溶けはじめた歯を修復する唾液の働きがあります。装置があるとこの流れが妨げられ、特に土台の際は唾液が届きにくい状態になります。汚れが残りやすく、守る働きも弱いという二重の条件が重なります。
▲ 同じ磨き方では追いつかなくなります
2. 白い跡は、初期のむし歯です
装置を外したときに現れる白いにごりは、脱灰といって、歯の表面からミネラルが溶け出した状態です。まだ穴は開いていませんが、初期のむし歯にあたります。この段階なら再石灰化によって回復が期待できますが、進めば削る治療が必要になります。
できやすい場所は決まっています
装置の際、特に歯ぐきに近い側に多く見られます。ここは毛先が当たりにくく、しかも汚れが溜まりやすい場所です。装置が付いているあいだは表面が見えないため、外して初めて気づくことになります。だからこそ、途中の管理が重要になります。
▲ 装置が付いているあいだは、表面が見えません
3. 道具を足してください
普通の歯ブラシだけでは、装置の周りは磨けません。毛先が山型になった矯正用の歯ブラシは、ワイヤーをまたいで両側に毛先が届きます。加えて、毛束が一つだけの細いブラシがあると、土台の際や歯と歯のあいだに直接当てられます。
1本ずつ当てる意識で
全体をまとめて磨こうとすると、必ず取り残しが出ます。装置の上側、下側、そして土台の際。それぞれに角度を変えて当てていきます。手間はかかりますが、この期間だけの話です。慣れると10分ほどでできるようになります。鏡を見ながら磨いていただくと、当たっているかどうかを確かめられます。最初のうちは、装置を付けた日に一度、当院で実際に磨いていただきながら当て方を確認します。文章で読むより、その場で手を動かすほうが早く身につきます。
▲ 角度を変えて、装置の上下と際に分けて当てます
4. フッ素を味方にしてください
磨き残しをゼロにすることは、装置がある口では現実的に困難です。そのため、残った汚れの影響をやわらげる手立てが必要になります。それがフッ素です。歯の表面を修復し、溶けにくくする働きがあり、矯正中の脱灰を減らすことが知られています。
洗口液や塗布も組み合わせます
フッ素配合の歯みがき剤を使い、すすぎは少量の水で1回にとどめてください。加えて、就寝前のフッ素洗口や、医院でのフッ素塗布を組み合わせる方法があります。どこまで行うかは、脱灰の起こりやすさを見てご提案します。
▲ 磨き残しをゼロにするのは現実的ではありません
5. マウスピース矯正の場合
取り外せるため清掃はしやすいのですが、別の注意点があります。装置を入れたまま糖分を含む飲み物を口にすると、その糖分が装置の内側に閉じ込められ、歯に長時間触れ続けることになります。水以外を飲むときは外してください。
外したら磨いてから戻す
食後に磨かずに装着すると、汚れを歯に密着させた状態で長時間過ごすことになります。外出先で難しい場合は、せめて口をよくすすいでから戻してください。装置そのものも、流水と柔らかいブラシで洗ってから使います。
▲ 取り外せることは、清掃の面では有利です
6. 検診の間隔を短くします
矯正中は、通常より短い間隔で確認をおすすめしています。磨けていない場所を早く見つけて伝えられれば、脱灰が進む前に手を打てます。また、装置の周りに付いた汚れは硬くなりやすく、専門的な清掃が必要になる場合もあります。
叱るための検診ではありません
磨けていない場所を指摘されるのが気まずい、というお声をいただくことがあります。目的は評価ではなく、どこにどう当てれば届くかを一緒に見つけることです。ご自身では気づけない場所を確認するための時間だとお考えください。
▲ この期間だけの取り組みだとお考えください
7. 外したあとにできること
白い跡が残ってしまった場合でも、対応の余地はあります。穴が開いていない段階であれば、フッ素を用いて再石灰化を促し、経過を見ることができます。目立つ場合には、表面を整える処置や、材料で覆う方法を検討することもあります。
まず進行を止めることから
見た目の改善を急ぐ前に、進行が止まっているかを確認します。清掃とフッ素で数か月経過を見て、変化がなければ次の段階を考えます。材料で覆う処置は自由診療(保険適用外)となる場合がありますので、費用は事前にお伝えします。
▲ 後から対応するより、防ぐほうがはるかに簡単です
まとめ|落とすことと、守ることを両方やります
矯正装置が入ると、毛先が装置を避けて滑るため際に汚れが残り、唾液の働きも届きにくくなります。この条件で同じ磨き方を続けると、装置を外したときに白い跡が残ることがあります。これは脱灰といって初期のむし歯にあたり、進めば削る治療が必要になります。
対策は二つです。矯正用の歯ブラシと細いブラシを足して装置の周りに毛先を当てること、そしてフッ素で歯の表面を守ること。磨き残しをゼロにすることは現実的ではないので、両方が必要になります。マウスピース矯正の方は、装着したまま水以外を飲まないことが重要です。矯正治療は自由診療(保険適用外)です。脱灰の起こりやすさには個人差がありますので、矯正中は検診の間隔を短くしてご案内しています。大阪市西区・九条のうえすぎ歯科クリニックまでご相談ください。
▶ 矯正歯科について詳しくはこちら
▶ インビザライン(マウスピース矯正)
▶ 予防歯科・定期検診
▶ 歯のクリーニング(PMTC)
▶ 24時間ネット予約
出典・参考資料
- 公益社団法人 日本矯正歯科学会
- 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯・口の健康」
- 公益社団法人 日本歯科医師会「テーマパーク8020」
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療の経過・効果には個人差があります。本記事で扱う治療には自由診療(保険適用外)が含まれます。詳しくは歯科医師にご相談ください。








