大阪府大阪市西区の歯医者さん うえすぎ歯科クリニック 歯科医師 院長 上杉良太です。
毎日多くの患者様を診察する中で、「以前治療した銀歯が痛む」「銀歯が取れてしまった」というご相談を非常に多くいただきます。日本の保険診療において、長年「当たり前」とされてきた銀歯ですが、実は将来的なお口の健康を考えたとき、いくつかの大きなリスクを抱えていることをご存知でしょうか。
本日は、プロの視点から「詰め物・被せ物の種類」と「銀歯が抱えるリスク」、そして「将来、自分の歯を失わないための選択肢」について詳しく解説していきます。
目次
1. 銀歯(金銀パラジウム合金)が抱える意外なリスクとは?
日本の保険診療で一般的に使用される「銀歯」は、正式には「金銀パラジウム合金」と呼ばれます。戦後の物資不足の中で、安価に噛む機能を回復させるために普及した素材ですが、歯科医療が進化する中でそのデメリットも明確になってきました。
経年劣化による変形と腐食
銀歯は、お口の中という過酷な環境(高温多湿、酸性・アルカリ性の変化、強い噛み合わせの圧力)に晒され続けると、徐々に**「錆び(腐食)」や「変形」**を起こします。金属は熱いものを食べれば膨張し、冷たいものを食べれば収縮します。この繰り返しの刺激によって、歯と銀歯を接着しているセメントが破壊され、隙間が生じてしまうのです。
見た目と心理的ストレス
銀歯は笑ったときや会話の際、想像以上に目立ちます。これがコンプレックスとなり、「人前で笑うのをためらうようになった」という方も少なくありません。また、長年使用していると金属成分が溶け出し、歯茎が黒ずむ「メタルタトゥー」を引き起こすこともあります。
2. 二次むし歯(再発)が「歯が抜ける」最大の引き金になる理由
詰め物や被せ物の下に再びむし歯ができることを「二次むし歯(二次カリエス)」と呼びます。実は、成人の歯科治療の多くはこの再発によるものです。
銀歯の「隙間」が温床になる
先述の通り、銀歯は経年劣化によって歯との間にわずかな隙間が生じます。その隙間から目に見えない細菌が入り込み、銀歯の下で密かにむし歯が進行します。
厄介なのは、銀歯が蓋となっているため、痛みを感じにくく、気づいたときには神経まで達するほど深刻化しているケースが多いことです。
繰り返す再治療の末路
むし歯が再発するたびに、歯をさらに大きく削らなければなりません。
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小さな詰め物(インレー)
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大きな被せ物(クラウン)
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神経を抜く治療
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抜歯
このように、銀歯の再治療を繰り返すと、最終的には支える歯の強度がなくなり、「歯が抜ける」という最悪の結末を招くリスクが高まります。
3. 銀歯が引き起こす全身への影響:金属アレルギーと口臭の悩み
銀歯のリスクは、お口の中だけにとどまりません。
金属アレルギーの懸念
長年お口の中にある銀歯から金属イオンが溶け出し、体内に蓄積されることで、突然金属アレルギーを発症することがあります。掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)といった皮膚の疾患や、原因不明の湿疹、頭痛、肩こりなどが、銀歯をセラミックなどのメタルフリー素材に替えることで改善したという症例も報告されています。
汚れの付着と口臭
金属の表面には、実は目に見えない細かな傷がつきやすく、そこに細菌の塊であるプラーク(歯垢)が付着しやすいという特性があります。銀歯の周りにプラークが溜まると、そこからガスが発生し、不快な口臭の原因となります。丁寧にブラッシングをしていても、銀歯自体の劣化や汚れが原因で口臭が改善しない場合もあるのです。
4. 【徹底比較】詰め物・被せ物の種類とそれぞれのメリット・デメリット
現代の歯科治療では、銀歯以外にも多様な素材が選択可能です。それぞれの特徴を理解し、自分のライフスタイルや将来の健康に合ったものを選ぶことが大切です。
| 素材 | 特徴・メリット | デメリット |
| セラミック(陶器) | 自然な白さで変色しない。プラークが付きにくく、二次むし歯のリスクが極めて低い。 | 強い衝撃で割れることがある。自費診療のため費用がかかる。 |
| ジルコニア | 「人工ダイヤモンド」とも呼ばれ、非常に強度が高い。奥歯に適している。 | セラミックに比べると透明感でやや劣る場合がある。自費診療。 |
| ゴールド(金) | 歯との適合性が最も良く、適度な柔らかさで周囲の歯を傷めない。 | 金色なので目立つ。自費診療。 |
| 銀歯(パラジウム) | 保険適用で安価。噛む機能を最低限回復できる。 | 二次むし歯のリスク。金属アレルギー、見た目の問題。 |
| コンポジットレジン | プラスチック素材。その場で充填でき、保険適用。 | 強度が低く、変色しやすい。吸水性があるため経年劣化が早い。 |
5. 将来の健康を守るために。定期的なクリーニングとメンテナンスの重要性
どんなに良い素材で治療をしても、それだけで「一生安心」というわけではありません。お口の健康を維持するためには、歯科医院での定期的なチェックが不可欠です。
プロによるクリーニング
毎日の歯磨きだけでは、バイオフィルム(細菌の膜)や歯石を完全に除去することは困難です。歯科衛生士による専門的なクリーニングを受けることで、むし歯や歯周病を未然に防ぐことができます。
早期発見・早期治療
定期検診に通っていれば、もし二次むし歯が発生していても、早期に発見して最小限の処置で済ませることができます。「痛くなってから行く」のではなく、「痛くならないために行く」という意識が、将来の残存歯数を左右します。
6. もしも歯を失ってしまったら…インプラントと入れ歯、ブリッジの選択
銀歯の再発を繰り返し、どうしても抜歯が必要になってしまった場合、その部分を放置してはいけません。放置すると周囲の歯が倒れ込み、噛み合わせが崩壊してさらなるトラブルを招きます。
インプラント
失った部分の顎の骨に人工の歯根を埋め込む方法です。
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メリット: 自分の歯と同じ感覚で噛める。周囲の健康な歯を削らなくて済む。
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デメリット: 手術が必要。自費診療。
入れ歯(義歯)
取り外し式の人工歯です。
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メリット: 適用範囲が広く、短期間で作製可能。
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デメリット: 違和感がある。噛む力が天然歯の20〜30%程度に低下する。
ブリッジ
両隣の歯を削って橋渡しをする方法です。
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メリット: 固定式で違和感が少ない。
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デメリット: 土台となる健康な歯を大きく削る必要があり、その歯の寿命を縮めるリスクがある。
どの方法がベストかは、患者様お一人おひとりの骨の状態やご希望によって異なります。当院ではそれぞれの選択肢について丁寧に説明し、納得いただいた上で治療を進めております。
7. まとめ:10年後、20年後も自分の歯で美味しく食事をするために
今回は、「銀歯のリスク」と「詰め物・被せ物の選び方」についてお話ししました。
銀歯は、確かに「安く、噛めるようにする」という点では優れた素材です。しかし、二次むし歯、金属アレルギー、口臭といったリスクを考慮すると、将来的な歯の寿命を延ばすためには、セラミックなどのより生体親和性の高い素材を選択することが賢明な投資と言えるかもしれません。
「とりあえず保険で」という選択が、10年後に高額なインプラント治療や入れ歯生活を招く可能性があることを、ぜひ一度考えてみてください。
うえすぎ歯科クリニックでは、患者様の現在の状態だけでなく、5年、10年先の健康を見据えたご提案を行っております。「今の銀歯が気になる」「どんな種類があるか詳しく知りたい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。
あなたの「一生自分の歯で食べる喜び」を、全力でサポートさせていただきます。
出典・参考資料








