矯正後の「後戻り」を防ぐ|リテーナーはいつまで使うのか

長い時間をかけて歯並びが整い、装置が外れた。ここで治療が終わったと感じられるのは自然なことだと思います。ところが、矯正治療でもっとも歯が動きやすいのは、実はこの直後の時期です。

整えた歯並びが元へ戻ろうとすることを、後戻りと呼びます。これを防ぐのが保定装置、いわゆるリテーナーです。大阪市西区・九条の当院では、この保定までを一続きの治療としてご説明しています。なぜ必要なのか、いつまで使うのかを整理します。

目次

  1. なぜ歯は元に戻ろうとするのか
  2. リテーナーの種類
  3. いつまで使うのか
  4. 後戻りしやすい条件
  5. 使わなくなってしまったら
  6. 手入れの方法
  7. 保定期間も検診は続けてください
  8. まとめ|保定までが、矯正治療です

1. なぜ歯は元に戻ろうとするのか

歯は骨に直接くっついているのではなく、根の周りにある繊維状の組織を介して支えられています。矯正で歯を動かすと、この組織は引き伸ばされた状態になります。装置を外すと、伸びたゴムが縮むように、元の形へ戻ろうとする力が働きます。これが後戻りの主な原因です。

骨が落ち着くには時間がかかります

動かした歯の周りでは、骨が新しく作り替えられています。この作り替えが完了して安定するまでには時間が必要です。見た目には並んでいても、内部ではまだ工事が続いている状態だとお考えください。この時期に支えがないと、歯は動いてしまいます。

装置を外したあと、内部で起きていること 直後 もっとも動きやすい 組織が伸びた状態 保定が最も重要 数か月 少しずつ落ち着く 骨の作り替えが進む 装着時間を守る 1〜2年 安定してくる 戻る力が弱まる 時間を減らせることも その後 維持の段階へ 加齢でも変化する 夜だけ続ける方も 安定するまでの期間には個人差があります

▲ 見た目が整っていても、内部はまだ安定していません

2. リテーナーの種類

保定装置には、取り外せるタイプと、歯の裏側に接着して固定するタイプがあります。取り外せるものは清掃がしやすい一方、装着時間を守れるかどうかに結果が左右されます。固定式は外す必要がないぶん確実ですが、その周りの清掃には工夫が必要です。

組み合わせて使うこともあります

前歯の裏側だけを固定式にして、全体は取り外し式で保定するという組み合わせもあります。どの方法が適しているかは、動かした量やもともとの歯並びによって変わります。後戻りしやすい状態かどうかも判断材料になります。

取り外し式と固定式 比較項目 取り外し式 固定式 装着の管理 自分で守る必要がある 外れない 清掃のしやすさ 外して磨ける 工夫が必要 見た目 装着中は見えることも 裏側で見えない 紛失の心配 外したときに注意 ない 調整のしやすさ 作り替えやすい 外して付け直す 適した範囲 全体の保定に向く 前歯の保定に向く

▲ どちらにも利点があり、組み合わせることもあります

3. いつまで使うのか

よくいただくご質問ですが、明確な終わりの日が決まっているわけではありません。一般的には、装置を使っていた期間と同じくらい、あるいはそれ以上の期間が必要とされています。最初のうちは長時間、安定してきたら夜だけ、と段階的に減らしていく形が多くなります。

減らし方は状態を見て決めます

自己判断で装着をやめてしまうと、そこから戻りはじめることがあります。定期的に来ていただき、歯の位置に変化がないかを確認しながら、装着時間を減らしていきます。安定していると判断できれば、間隔を空けていくこともできます。

保定にかかる期間の考え方 同じ くらいの期間 動かした期間 装置で歯を並べた時間 保定の期間 同等以上かかることが多い その後 夜だけ続ける方もいます 必要な期間には個人差があります

▲ 動かした期間と同じくらい、あるいはそれ以上かかります

4. 後戻りしやすい条件

どなたにも後戻りは起こりえますが、起こりやすい条件はあります。もともと歯のねじれが強かった場合、大きく動かした場合、あごの成長がまだ続いている場合。また、舌で歯を押す癖や口呼吸といった習慣が残っていると、そちらの力に引かれて動くことがあります。

習慣が残っていると戻りやすくなります

歯並びは、周囲の筋肉から日常的に受ける力とつり合ったところに落ち着きます。舌で押す癖が続いていれば、その力が働き続けます。装置で並べても、原因となる習慣が変わらなければ、同じ方向へ戻ろうとします。そのため、矯正の期間中から舌の位置や呼吸の仕方を見直していただくことがあります。地味な取り組みですが、装置を外したあとの安定に関わってきます。気になる癖に心当たりがあれば、治療中でも遠慮なくお話しください。

後戻りしやすい条件 1 大きく動かした 移動量が多いほど 戻る力も大きい 2 ねじれが強かった 回転させた歯は 特に戻りやすい 3 習慣が残る 舌の癖・口呼吸 力が働き続ける 4 成長が続く あごの変化 経過を追う必要 条件が重なるほど、注意が必要になります

▲ 当てはまる場合は、保定をより丁寧に行います

5. 使わなくなってしまったら

しばらく使っていなかったリテーナーが、久しぶりに入れたら合わなくなっていた。これはよくあるご相談です。合わないということは、その分だけ歯が動いたということになります。無理に押し込むと、装置が壊れたり歯に負担がかかったりします。

早めに相談してください

動きが小さいうちであれば、装置を作り直すだけで対応できることがあります。時間が経つほど戻りは進み、場合によっては再び矯正が必要になります。使えなくなった時点でご連絡いただければ、対応の幅が残っています。

してほしいこと・避けてほしいこと してほしいこと ・決められた時間装着する ・外したらケースに入れる ・流水と柔らかいブラシで洗う ・定期的に確認を受ける ・合わなくなったら連絡する 避けてほしいこと ・合わないまま押し込む ・熱湯で洗う・車内に置く ・ティッシュに包んで置く ・自己判断で使うのをやめる ・壊れたまま使い続ける

▲ 合わなくなったら、無理に入れないでください

6. 手入れの方法

リテーナーは毎日口の中に入れるものですので、清潔に保つ必要があります。外したあとは流水で洗い、柔らかいブラシで表面の汚れを落とします。歯みがき剤に含まれる研磨材は表面を傷つけることがあるため、使わないほうが無難です。

熱に弱い材料です

熱湯での洗浄や、夏場の車内への放置は変形の原因になります。変形した装置は歯を正しい位置に保てないばかりか、かえって動かしてしまうことがあります。専用の洗浄剤を使う場合も、指示された使い方を守ってください。

リテーナーを長く使うために 外したらすぐケースに入れる 流水と柔らかいブラシで洗う 熱湯や高温の場所を避ける 研磨材入りの歯みがき剤は使わない しっかり乾かして保管する ひび・変形がないか確認する 変形した装置は、かえって歯を動かすことがあります

▲ 毎日使うものだからこそ、扱い方が大切です

7. 保定期間も検診は続けてください

保定の期間中は、装置の状態と歯の位置を確認するために来院していただきます。同時に、むし歯や歯周病の確認も行います。矯正が終わったからといって、口の中の管理が終わるわけではありません。むしろここからが長い付き合いになります。

歯は生涯かけて少しずつ動きます

矯正をしていない方でも、年齢とともに歯並びは少しずつ変化します。保定は、この自然な変化に対しても働きます。夜だけの装着を長く続けておられる方がいらっしゃるのは、こうした理由からです。無理のない形で続けていければと思います。

保定期間の進め方 1 装置を外す その日から保定を開始 2 長時間の装着 もっとも動きやすい時期 3 段階的に減らす 確認しながら夜だけへ 4 維持していく 検診とあわせて続ける 減らす時期は状態によって異なります

▲ 状態を確認しながら、少しずつ減らしていきます

まとめ|保定までが、矯正治療です

矯正で動かした歯は、装置を外した直後がもっとも動きやすい状態にあります。根の周りの組織が引き伸ばされたままで、骨の作り替えも終わっていないためです。この時期に支えがなければ、整えた歯並びは元へ戻ろうとします。これを防ぐのがリテーナーです。

使う期間は、動かしていた期間と同じくらい、あるいはそれ以上とされています。最初は長時間、安定してきたら夜だけ、と段階的に減らしていきますが、減らす時期は状態を見て判断します。自己判断で中断すると、そこから戻りはじめます。合わなくなった場合は無理に入れず、早めにご連絡ください。矯正治療は自由診療(保険適用外)で、必要な保定期間には個人差があります。大阪市西区・九条のうえすぎ歯科クリニックまでご相談ください。

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出典・参考資料

  • 公益社団法人 日本矯正歯科学会
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯・口の健康」
  • 公益社団法人 日本歯科医師会「テーマパーク8020」
  • 公益社団法人 日本小児歯科学会

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療の経過・効果には個人差があります。本記事で扱う治療には自由診療(保険適用外)が含まれます。詳しくは歯科医師にご相談ください。